梅州興寧にて、200MW/400MWh のシェアード蓄電所が正式に系統連系を完了した。
公開報道によると、当該発電所は 5MWh 蓄電池キャビンを 80 基配置し、総投資額は約 4.8 億元となる。こうした発電所に対し、人々がまず思い浮かべるのは蓄電池容量、充放電電力、1 回の充放電サイクルに要する時間などである。
(図 1:シェアード蓄電所現場写真)
しかし視点を蓄電パワーコンディショナー(PCS)に移すと、別の注目すべき課題が見えてくる。蓄電設備の有効電力が低下したからといって、電流測定の要求が緩くなるわけではない。
特に周波数調整、無効電力調整、待機など各運転状態において、電流の大きさ、変化速度、測定精度に対する要求はそれぞれ異なる。
見落とされがちな運転モードとして無効電力調整がある。
蓄電 PCS は蓄電池の充放電を制御するだけでなく、機器能力および系統連系要件を満たす範囲で、電力系統との間で無効電力の授受を調整できる。
交流系統において、有効電力は電気エネルギーの正味の伝送に対応し、無効電力は交流の電場・磁場の周期的なエネルギー交換に関係する。両者とも電圧と電流に関わるが、電流と電圧の位相関係が異なる。
平衡三相正弦波系統における有効電力は近似的に次式で表される。
\(P=\sqrt{3} \times U \times I \times \cos\varphi\) ここでUは線間電圧実効値、Iは線電流実効値、\(\varphi\)は電圧と電流の位相差である。
(図 2:有効電力がゼロ付近でも電流が大きくなり得る理由) 注:図は模式データであり、実際の蓄電所試験結果ではない。本図は電圧・電流の位相関係を説明するためのもので、特定蓄電プロジェクトの実運転状態を証明するものではない。
電流と電圧がほぼ直交する場合、\(\cos\varphi\)はゼロに近くなり、有効電力は微小でも電流実効値は大きな値を取り得る。
つまり、PCS の出力する有効電力の大きさだけを見て、電流測定の負荷の度合いを判断してはならない。
なお、電流が大きい場合、導体の抵抗損失は通常増加する。ただし PCS 全体の損失はスイッチング状態、磁性部品、運転条件などにも依存するため、無効電力運転時の発熱が満充放電時と完全に同一であると単純に考えてはならない。
電流センサーにとって本質的な課題は、各運転モードにおいて被測定電流の最大値、変化速度、求められる測定精度を把握することである。
200MW は発電所の定格電力、400MWh は蓄電容量であり、それぞれ電力処理能力とエネルギー規模を表すが、各電流測定点に必要なセンサーレンジを直接定めることはできない。
理由は発電所内に複数の測定箇所が存在するためである。
蓄電池側では直流充放電電流、PCS 直流母線側では電力変換過程の電流変化、交流側では三相電圧・電流、電力制御、系統連系要件に基づき測定範囲を決定する必要がある。
同一 PCS であっても、箇所ごとの電流値を同一視することはできない。
よってセンサー選定において、発電所の 200MW 定格電力から逆算した電流値を、全測定点の定格電流として安易に採用してはならない。
エンジニアリングの現場では、最大連続電流、短時間過負荷電流、ピーク電流、実際の電流波形、測定系のダイナミックレンジを確認する必要がある。
無効電力調整機能を持つ PCS の場合、低有効電力時でも無効電流が大きな割合を占めることがあるため、当該運転モードにおける最大電流要件を確認しなければならない。
これが、電流センサーのレンジを発電所の電力等級だけでなく、測定箇所と運転境界条件に合わせて決定する必要がある理由である。
(図 3:蓄電 PCS 内の電流センサー取付位置) 注:点線は測定位置を示し、センサーが必ず母線上に設置されるわけではない。実際の配置は PCS トポロジーと設計仕様に依存する。
無効電力調整が「有効電力だけで判断してはならない」ことを示すのに対し、周波数調整では電流測定の動的性能の重要性が顕在化する。
系統周波数が変動すると、蓄電システムは制御ロジックに基づき有効電力を調整し、電力需給バランス維持に貢献する。実際の応答はディスパッチ指令、制御戦略、機器能力、系統連系要件に依存し、周波数調整のたびに充電と放電が切り替わるわけではない。
しかし双方向電力調整を行うシステムでは、短時間で電流が大きく変化し、ゼロ点を繰り返し横切る場合もある。
このときセンサーの性能は、定格電流付近の精度だけで評価できない。
例えば、あるセンサーは定格電流付近では精度要件を満たしていても、小電流領域、ゼロ点通過時、温度変化下で同等の絶対誤差を保証するとは限らない。ゼロ点オフセット、温度ドリフト、ノイズ、直線性が測定結果に影響を与える。
これらの誤差要因は大電流時には読み取り値に対して微小な割合だが、電流が数アンペアまで低下すると相対的な誤差割合が顕著に大きくなる。
例:測定系に固定のゼロ点オフセットが存在する場合、1000A 通電時には読み取り値に対する割合は小さいが、実電流が数 A まで低下すると相対誤差が大幅に増大する。
したがって制御・診断機能で小電流を高精度に測定する必要がある場合、定格電流での精度指標だけで判断せず、オフセットとその温度変化、ノイズ、小電流域の測定性能を確認しなければならない。
なお、蓄電待機モードのすべてにおいてゼロ付近の高精度測定が求められるわけではない。具体的な要求は当該測定点が担う機能(電力制御、保護、状態監視など)に依存する。
大電流、直線性、動的応答を両立する用途では、クローズドループホール電流センサーが有力な選択肢となる。
原理は以下の通り。被測定電流が生成する磁界をホール素子で検出し、補償回路が二次コイルを駆動して逆方向の磁界を発生させ、被測定電流による磁束をほぼ打ち消す。この補償電流から測定出力を得る。
設計が適切であれば良好な直線性と動的性能が得られ、高精度な電流検出が必要な場面に適する。
ただしクローズドループ方式であっても誤差が完全にゼロになるわけではなく、クローズドループ型が必ずオープンループ型よりゼロ点性能に優れるとは限らない。
実際の性能は磁気回路設計、補償回路、ゼロ点オフセット、温度ドリフト、ノイズ、動作条件に左右される。製品選定時は仕様書と試験条件を確認する必要がある。
蓄電 PCS では帯域幅と応答時間も重要である。制御システムは速やかな電流フィードバックを必要とするが、帯域幅は大きければよいわけではない。測定系の周波数応答、ノイズレベル、フィルタ設計、制御ループ設計を整合させる必要がある。
測定系が振幅誤差や位相遅れを引き起こすと、電流フィードバックおよび関連制御機能に悪影響を及ぼす。逆に帯域幅を過度に大きくすると高周波ノイズが増大し、信号処理と制御設計の難易度が上昇する。
よって帯域幅の数値だけを追求するのではなく、センサーが対象信号の周波数帯をカバーし、精度、遅延、ノイズの総合要求を満たすかを確認することが重要である。
蓄電システムが待機タスクを担う場合、ゼロ電力指令または低電力運転となり、ディスパッチ指令を待つ。
しかし「有効電力出力がほぼゼロ」と「全測定点に電流が流れていない」は同義ではない。交流側で無効電力支援が必要となる場合があるほか、機器内部にフィルタ、補助回路、制御回路に関連する電流が流れる場合もある。
ある測定点の電流が実際にゼロ付近であっても、出力がゼロに近いことだけでセンサーおよび測定系が正常であると断定してはならない。
待機中に測定系の健全性を確認したい場合、冗長測定、適切な診断ロジック、専用自己診断回路などを活用できる。ただしこれらの機能は機器個別の実装に依存し、すべての蓄電所に標準搭載されているわけではない。
高信頼性が求められる用途では、測定系の信頼性は通常運転、低電力待機、故障診断の各フェーズを通じて確保する必要があり、大電流運転時だけで評価してはならない。
大電流測定用途の例として、芯森電子のクローズドループホール電流センサー CM5A 2000 H15 を取り上げ、パラメータの読み方を解説する。
製品仕様による主な指標は下記の通り。
(図 2:CM5A H15 シリーズ製品仕様図)
各パラメータはそれぞれ異なる観点を示す。
定格電流と測定範囲はレンジ適合性の一次判断に用いるが、連続運転条件、短時間過負荷耐性、温度上昇制限を合わせて確認する必要がある。
精度と直線性は測定誤差を評価するが、定義と試験条件が異なるため互いに代替できない。特に精度の仕様が「オフセット項を含まない」場合、ゼロ点付近の総誤差としてその数値を直接流用してはならない。
帯域幅と応答時間は動的性能の目安となる。蓄電 PCS の実設計では、対象信号周波数、制御周期、フィルタ設計、測定系全体の遅延と組み合わせて評価する。
これらのパラメータは大電流クローズドループ測定の評価材料となるが、この仕様だけで当該機種が蓄電所の全測定点に適合すると判断してはならない。実際の選定には絶縁耐圧、動作温度範囲、取り付け条件、測定点の電流特性を確認する必要がある。
ピークカット、周波数調整、無効電力調整、待機といった各運転モードは、PCS の電流振幅、変化速度、制御目標を変化させる。
電流測定において、レンジは対象電流をカバーできるかを決め、精度は測定誤差に影響し、直線性は各電流域の測定性能に関わる。帯域幅・応答時間は動的フィードバック性能、オフセットと温度ドリフトは小電流測定の信頼性に影響する。
これらの指標は単純に代替し合うことはなく、単一パラメータだけでセンサーの適合性を判断してはならない。
200MW/400MWh クラスの蓄電所において、蓄電池キャビンや液冷システムが設備の基礎能力を決定し、PCS 制御システムは信頼できる測定フィードバックに依存して各種運転タスクを実行する。
電流センサーは部品の一つに過ぎないが、電流情報取得を担う核心部品である。実運転範囲において安定した測定結果を出力できるかは、測定箇所、運転モード、システム要件を総合的に考慮して判断する必要がある。
シェアード蓄電において重要なのは、センサーの単一パラメータの優秀さではなく、小電流から大電流、定常状態から過渡変化まで、測定系全体が機器の制御・監視要求を持続的に満たすことである。
(備考:本稿は蓄電システムの代表的な運転モードをもとに電流測定のエンジニアリング上の要求を論じている。文中の製品パラメータは事例であり、興寧蓄電所の実際の採用機種を示すものではなく、業界標準または特定工事の選定結論を構成するものでもない。)