直流給電システムでは、正常動作電流が数十アンペア、場合によっては百アンペアに達することがあります。しかし漏れ電流監視において本当に注視すべき異常電流は、わずか数ミリアンペアの場合もあります。
ここで問題となるのは、数十アンペアの正常電流とミリアンペア級の異常電流が同時に存在するとき、センサーはどのように後者を検出するかという点です。
磁束ゲート方式の残留電流センサーを例に挙げると、鍵を握るのはセンサー自体の感度だけではなく、一見単純だが見落とされがちな取り付け要件です。正極線と負極線をペアにして同一の磁心窓に貫通させることです。

まず正常動作状態を考えます。 直流電源が負荷に給電する際、電流は正極から流出し負荷を経由した後、負極から戻ってきます。仮に正極を 50A が流れれば、負極からも 50A が還流します。この 2 本の導線に流れる電流は大きさが等しく向きが反対になります。
正極線と負極線を同時にセンサーの磁心窓に通すと、それぞれが生み出す起磁力は互いに打ち消し合います。理想的な状況では、センサーが観測する正味の電流はほぼゼロになります。
しかしシステムに漏れが発生すると、一部の電流が本来の負極回路を通らず別の経路へ流れ出すため、正極と負極の電流値が一致しなくなります。
例えば正極出力が 50A、正常な還流が 49.99A、残りの 10mA が別経路へ流出した場合、磁心窓を通る 2 本の導線のバランスが崩れ、10mA の残留電流が生まれます。
センサーが検出するのはこの差分電流であり、負荷そのものの 50A ではありません。
これが残留電流検出と一般的な負荷電流検出の大きな違いです。一般的な電流センサーは単線に流れる電流値を測定するのに対し、残留電流センサーは対象回路内の流出電流と戻り電流のバランスの崩れを監視します。
正負極を同時に通す目的は電流を 2 回測ることではなく、正常電流を互いに打ち消し、異常電流だけを取り出すことにあります。
正極線だけを磁心窓に貫通させた場合、センサーは主に正極線の負荷電流を検出します。
負荷電流が 50A に達している状態では、漏れが無くてもセンサーは大きな磁界を受けます。この場合測定されるのは正負極間の電流差ではなく単線の電流となります。
センサー自体が高感度であっても、測定対象自体が間違っていれば補正することはできません。
取り付け上の注意点として、正極と負極は同一の磁心窓に同時に通す必要があります。正負極をそれぞれ別々の窓に通しても自動で打ち消し合うことはありません。また、導線の巻き方、外部磁界、取り付け位置も実測結果に影響を与えます。
なお、実際の配線はセンサーの製品仕様書およびシステム設計要求に従ってください。
芯森 FR2V H00 シリーズを例に挙げると、各モデルごとに定格測定範囲が定められています。機種選定時には定格電流のほか、測定範囲、感度、ゼロ点オフセット、温度変化による出力への影響などを考慮する必要があります。
一部レンジ仕様は下記の通りです。
| 定格測定電流 | 測定範囲 |
|---|---|
| ±10mA | ±15mA |
| ±20mA | ±30mA |
| ±50mA | ±75mA |
| ±100mA | ±150mA |
| ±200mA | ±300mA |
| ±300mA | ±360mA |
各レンジの測定範囲は一律の倍率にはなっていないため、定格電流から単純に推計することはできません。
レンジを小さく設定しすぎると、異常電流が大きくなった際に規定の測定範囲を超えてしまいます。一方、レンジを大きくすれば微小電流の測定性能が良くなるわけでもありません。
検討すべきポイントは、通常時に発生しうる残留電流の大きさ、検知したい最小の変化量、後段回路がセンサー出力を確実に識別できるかどうかです。
例えば、ある機種の理論感度が 500V/A の場合、入力電流が 1mA 変化すると理論上の出力変化は以下のように計算されます。 500V/A × 0.001A = 0.5V
この数値は入力電流の変化と出力変化の比例関係を示すだけで、センサーの最小検出可能電流と同じではありません。
実際の検出能力はゼロ点ドリフト、ノイズ、温度ドリフト、後段のサンプリング精度、システムのキャリブレーション方法など多くの要因に左右されます。
したがって選定時は感度の数値だけを見て判断せず、「レンジが小さければ測定性能が優れる」と安易に考えてはいけません。

FR2V H00 シリーズの仕様に記載されている応答時間 500ms を理解するには、まず試験条件を確認した上で実際のアプリケーションと照らし合わせて判断する必要があります。
センサー単体の応答時間=システム全体の異常処理時間ではありません。
実機では異常電流が発生してから保護動作が実行されるまでに、センサー出力、制御器のサンプリング、デジタルフィルタリング、閾値判定、通信、アクチュエータ動作など複数の工程が介在します。
そのため故障回路を高速で遮断したい場合、センサーの応答時間だけでなく、検知から保護までのシステム全体のリンクを評価しなければなりません。
また 500ms という数値のみを根拠に、ある保護用途に適合・不適合を判断してはいけません。故障の種類、システムの応答目標値、仕様書の試験条件を踏まえて評価する必要があります。
直流システムの場合、接地方式や故障電流の経路にも注意が必要です。絶縁異常が発生しても、必ずしも枝路の残留電流センサーで電流差として検出できるとは限らず、監視方案はシステム構造に適合させる必要があります。
入力電流が急変してもセンサー出力が瞬時に安定値に達するわけではなく、一定の応答過程を経ます。図の波形は応答過程の概念図であり FR2V H00 の実測波形ではない点に注意してください。実際の応答速度は仕様書の試験条件・試験結果を参照してください。

測定レンジや応答時間のほか、取り付け方法も非常に重要です。
第一に、監視対象の正極線・負極線の両方を同一の磁心窓に通し、監視対象外の他回路の導線を窓に混在させないこと。
第二に仕様書に従い電源供給、出力配線、接地処理を行い、配線ミスによる測定結果への影響を回避すること。
第三にセンサーの絶縁仕様、動作温度、取り付けスペースが機器の要件に適合しているか確認すること。人身安全や電気的保護に関わる用途においては、センサーに絶縁機能が備わっているからといってシステム全体が安全要件を満たしていると判断してはなりません。
ミリアンペア級残留電流検出では、微小電流を検知するセンサー性能だけでなく、大きな正常負荷電流の中から本当に必要な電流差を取り出せるかが問われます。
正負極を同時に磁心窓に通すという一見簡単な取り付け要件の裏には、残留電流測定の根本的なロジックが存在します。測定対象が正しくなければ、感度、レンジ、応答時間といった各パラメータも意味を持ちません。
✅ 正しい:正極・負極をペアで同一磁心に貫通
正負極の電流が大きさ等しく向き反対のため、磁心内の起磁力が打ち消し合う。センサーが受ける正味の電流はほぼゼロとなり、大きな負荷電流の干渉を受けない。
❌ 誤り①:片方の線だけ貫通
センサーは負荷電流そのものを検出してしまい、正負極間の電流差を測定できない。
❌ 誤り②:正極と負極をそれぞれ別の磁心に貫通
個別の磁心では出力が自動的に打ち消し合わない。単一磁心による残留電流検出方式では使用不可。
取り付けヒント:正負極は同一磁心窓へ同時に通す。対象外回路の配線を同じ窓に入れない。実際の配線は製品仕様書に従う。
今天 16:51
漏れ電流センサーの仕事原理とは?
漏れ電流センサーの応用分野は?
漏れ電流センサーの性能を向上させる方法は?